LINEを使った相談で心の繋がりを取り戻す
コロナ禍に繋がれる相談窓口を
原因が分からない、治療法が分からない子どもの難病は700種類を超え、全国で25万人以上の子どもが難病と共に暮らしています。また、長期的な治療を必要とする命に関わる子どもの重い疾患「小児慢性特定疾病」に対する医療費助成の受給者は11万人に上ります。
同じ悩みを抱える人に出会えず、孤立し、誰に相談をしていいのか分からない、そもそも病名さえ分からず困惑しているたくさんの親子がいます。その先には、貧困や鬱など、さまざまな二次的な問題を抱えることも。
認定特定非営利法人難病のこども支援全国ネットワーク(以下、難病のこども支援全国ネットワーク)では、こうした悩みや孤独に対する相談窓口を開設し、対応をしています。
電話相談をはじめ、全国各地のサマーキャンプや交流会の開催、セミナー等の啓発活動など、難病の子どもと家族、彼らを支える活動をする人たちを繋ぎ、サポートする活動を1988年の設立当初から続けてきました。難病や慢性疾患の子どもに関する相談には、専門職や自立支援員、病気や障害のある子どもを育てた親や経験者のピアサポーターが対応してきました。
また、相談者のいる病院に赴いて話し相手になり、相談を受ける活動を行っていましたが、コロナ渦のため病院を訪問することができなくなってしまいました。さらに病院の中では、患者家族同士の話も、ちょっとした愚痴や会話を交わすこともできなくなってしまったのです。
困難な状況にある家族にとってこうした日々の小さな支え合いは必要不可欠なものなのにどうしたものか、病院や家庭で孤立する家族にできることがないものかと試行錯誤して2021年11月に開設されたのが「LINE相談」でした。
本当の不安や悩みが隠れていることも
開設に先立ち、2020年9月、ピアサポーターを対象に、SNSによる相談の特徴や役割、主な対応方法、相談員の基本姿勢について学ぶ研修会とケースカンファレンスを開催したところ、26人が参加しました。
参加者からは「研修を受けたことで、初めてのLINE相談でも安心して対応できる気がした」「文字だけで受ける相談の難しさもあるが、LINE相談でも、対面で相談を受けている時のように相談者に寄り添う気持ちで対応することが大切なことが分かった」といった感想が寄せられました。
こうした研修やカンファレンス、システムの構築を経て2021年11月からLINE相談がスタート。登録者数は着実に増えています。
LINEでの相談をきっかけに電話相談ができるようになり、改めていろいろな話をしてその後の行動に繋がったこともありました。
「困り事があったときの御守り代わりになるのかなと。相談窓口の間口が広がって良かったと感じています」と事務局次長の本田さんは話します。
質問や相談を受けてやりとりをする中で、最初の相談内容ではないところに本人が本当に話したかったことが隠れていることもあります。
引越先の医療機関探しの相談にのっていたところ、話をする中で実は子どもの病気のことを詳しく知らない病院や地域に行く不安を抱えていることが分かり、そのことへの適切なサポートをすることができました。
「LINEがあることで、電話での相談が難しい状況の家族、若い人や孤立している家族にも相談しやすく、やりとりがスムーズにできるのかなと思っています」と本田さんは言います。
心の繋がりに支えられて
「今後さらに周知を広げたいですし、LINEで繋がっている方々に有益な情報の提供もしていけたらと思っています」と本田さん。
本田さんは、これまでの活動を通して、誰かと繋がっていることの大切さ、誰もが心の繋がりを求めていることを実感したと言います。
難病のこども支援全国ネットワークが行っている同じ病気の人同士を繋ぐ「おともだち紹介」の登録者からは、「病気に関する情報が何もない中でおともだちを紹介してもらい、本当に救われて感謝している」との感謝の声が。登録者にフォローの連絡をした際には、「登録してから数年経っていて、登録していたことも忘れかけていたが、気に掛けて電話をくれて嬉しい」と言われました。
「特にコロナ渦になってから、繋がりの大切さを感じていて、ちょっとした雑談をしたり、愚痴をこぼしたりすることができる場が大切なのだなと改めて気づかされました。今回のLINE相談をはじめ、我々の活動が、困っているご家族の心がやすらぎ、ほっとできる場になればと願っています」と本田さん。
「まずは多くの方に難病児や障害児のことを知ってもらいたいです。よく知らないから不安なのだと思います。彼らが生きやすい社会は誰にとっても生きやすい社会ですから」。
●認定特定非営利活動法人難病のこども支援全国ネットワーク
団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)
●2020年度日本財団支援事業
難病児家族向けLINE相談事業