医療的ケア児の地域ケアを推進する
全ての人が生きやすい地域社会を目指して
愛知県半田市に拠点を置く特定非営利活動法人ふわりは、障害のある人たちが日本全国どの地域でも元気で過ごせるような社会を作るための啓発活動や研修を行っています。元々は障害のある人への生活支援サービスが主な活動でしたが、2003年に設立した社会福祉法人にサービスの部分を移行、ふわりはNPOとして啓発活動に事業を特化しました。介護サービスで培った豊富なネットワークを背景に、研修やコンサルテーション、講演会、行政への提言を行うなど、難病の子どもと家族を支える人材育成と、地域全体で子どもを支えていくための仕組み作りに取り組んでいます。
名古屋での研修。事例をみながらの手技の講義
介護と医療をつなぐ担い手を育成
医療の進歩によって救われる命が増加したのと同時に、自宅での医療的ケアが必要な子どもたちは増え続けており、その数は18000人にのぼるといわれます。呼吸器をつねに確認して、痰の吸引をするなど、家族は24時間休みなくケアを続けなければなりません。
ふわりでは、2014年から医療への依存度の高い子どもへの支援プロジェクトとして、研修会をスタート。当時はNICU(新生児集中治療室)からでた子どもの退院後の支援が整っておらず、地域の理解もほとんどなかったため、地域社会での受け入れ態勢の土壌作りと介護と医療との連携が重要な課題でした。
研修は、参加者の経験にあわせて充実した内容が学べるように、入門編、初級、中級にわけて開催。入門編では、初めて医療的ケア児に関わる人を対象に、初歩的な手技や遊びの支援、姿勢に関する介護支援の習得を、初級編ではもう少し段階をあげて、子どものポジショニングや体位、手技などの実技を学びます。また、子どもの脳の特性から、発達に寄り添った支援を行うための研修や事例検討会を実施。中級編では、子どもを支えていくために地域の連携をどのように作っていくかをワークなどで学び合う研修を行いました。
「必要な時期に必要な経験をすることが発達につながるのに、在宅支援ではそこがおざなりにされている。それを解消してその子を中心とした支援の輪を広げるための研修を目指しています。」と事務局長の五味紘子さんは話します。子どもの個性や思いを理解・共有し、それを形にしていくプロセスも大切にしているといいます。「中級編の相談マネージメント研修後に、ある介護士さんが研修を通して励まされたと涙していました。地域で一人で悩んでいたようです。これまで続けてきてよかったなと思いました。」とも。
研修によって、参加者や講師、事業所同士のつながりができ、情報交換や意見交換、モチベーションを高めあうきっかけにもなっています。参加者がここでの学びやつながりをそれぞれの地域で活かすことが、医療的ケア児を地域で支える仕組みの強化につながるのです。
名古屋での研修。講師とのディスカッション
医療的ケア児を地域全体で育てよう
ふわりが主催し、2010年より毎年開催している講演会「ふわりんくるーじょん」は、医療、福祉、行政、地域、教育関係、そして政治家まで、障害者支援に関わるあらゆる関係者が一堂に介し、二日間にわたって行われる一大イベントです。2017年度は「地域包括ケア」がテーマ。211人が参加し、病児の問題が今後どうなっていくかをさまざまな面から議論しました。自分の住む地域で、自分らしく暮らし、最期の看取りをむかえるためには何ができるのか。最後のパネルディスカッションでは、医療、福祉、教育、社会の問題はそれぞれが複雑に絡み合っており、垣根をこえた策が大事という結論でまとまりました。
当日はネットでライブ配信も行われ、子どもの在宅介護などで来場できなかった家族も自宅から参加することができました。介護におわれる日々で将来に不安を感じるなか、「国がこんなに前向きに取り組んでいることを知って希望がもてました」という感想も。リアルタイムで意見を伝えることができ、行政や国会議員に家族の声を直接届ける機会になりました。
「0歳から100歳まで地域で支える仕組みを作りたい。」ふわりは、重い障害がある人も、高齢者も、みんなが自分の住む地域で共に自分らしく安心して暮らすことができる社会、子どもをみんなで支えていく地域作りを目指します。
最後のパネルディスカッションでは、垣根をこえた連携について話し合われました
・特定非営利活動法人ふわり
団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)
医療依存度の高い子どもの地域ケア推進プロジェクト
○研修会の実施
・スペシャルニーズのある子どものための研修会、全8回(東京113名、名古屋80名)
・現場で役立つ医療的ケア・リハビリ研修(東京、15名)
・現場で役立つリハビリと姿勢について学ぶ研修(名古屋、22名)
・よりよい子どもの育ちを支える脳の特性を学ぶ講座初級編(愛知18名、福井20名)
・処置困難ケースのスーパーバイズが受けられるカンファレンス研修会(中級編)(愛知17名・東京15名)
○講演会の開催(211名)