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医療的ケア児や発達障害の子がみんなで楽しめるコンサート

2024.12.06
特定非営利活動法人ままはーと

本物の音楽を楽しみたい

軽やかな管弦楽の音色に、子どもたちは配られた手作りのマラカスを振りながら踊りだし、みんなで大合唱。熱気を帯びた会場に楽しそうな歌声とマラカスの音が響きます。

2024年1月、福島県いわき市の芸術文化交流館アリオスのホールで、様々な障害がある子どもたち、きょうだい児、ご家族、地域の人たちみんなが一緒に楽しめるクラシック音楽の「ふれあいコンサート」が開催されました。

この会を主催したのは、特定非営利活動法人ままはーと。ままはーとは、福島県いわき市で2017年に設立された団体で、医療的ケア児、重症心身障害児のための児童発達支援、放課後等デイサービスや生活介護事業を行っています。

代表の笠間真紀さんはこう話します。 「障害のある子どもたちは、音楽を聴くと表現豊かに手をたたいて大きな声を出したり、楽しくなって走り回ったりしてしまうこともあるため、コンサートに連れて行きたくてもなかなか行けないという親御さんの声を多く聞きます。そうしているうちに、音楽が大好きな子どもたちが障害のあるなしにかかわらずにコンサートホールで本物の音楽を楽しむ機会をもちたいと思うようになりました」。

開催を目指して寄付を募り、日本財団の助成を受けて実現した今回のコンサートは午前と午後の二部構成で、午前は子どもたちが自由に踊ったり歌ったりできる参加型。午後はクラシック音楽を楽しみたい大人向けの演奏会。多くの地域の人が参加し、音楽を通して障害のある子どもたちのことを知り、関心を寄せるきっかけになりました。

音楽って楽しいね! 終演後も温かな交流の時間は続きました

家族同士、地域の人との出会いの場に

チケットは発売するとすぐに完売。当日は大雨にもかかわらず午前と午後を合わせて352人が参加しました。午前に参加した家族のほぼ全てがコンサートは初めてだったということでした。

会場では小さい子どものお母さんとその先輩のお母さんが出会い、ちょっとした心配事や悩みを相談して「大丈夫、大丈夫」と言ってもらい、ほっとする場面もありました。

「親同士が一堂に会することはないので良い機会になりました。また、普段の生活の中では、お母さん同士はコミュニティ作りが上手ですが、お父さん同士はあまり得意ではなくて。今回はお父さんが参加して『楽しかった』と言ってくれたのもとても良かったです」と笠間さん。

地域住民からは「呼吸器を付けて暮らす、こんなに大変なお子さんがいるとは考えたことがなかった」との声がありました。

「様々な障害のある子どもが自分たちの地域でも暮らしていることをまずは知ってもらいたい。そのきっかけになればと思っています」と笠間さん。

「行政の方が参加したり、銀行の方がポスターの配布を手伝ってくれたり、高校生がボランティアで受付を手伝ってくれました。参加した中学生が、学校の授業で希望を出してままはーとに職場体験に来てくれることになったのもうれしい出来事でした」。

家族揃って初めての音楽コンサート 。楽しかったね

経験を増やしてほしい

「病気や障害のある子どもたちには経験を増やしてほしい、様々な経験をしてほしいのです」と語る笠間さん。笠間さんには5人の息子がいて、三男と四男は双子で、三男のお子さんには障害がありました。その子たちが生まれた5か月後に東日本大震災が発生。当時の福島県内に重症心身障害児に特化した施設はなく、震災後の混乱の中、家族だけでなんとか乗り越えて暮らした経緯がありました。

その後、お子さんが成長する過程で「保育園には入れません。この制度は使えません」と障害を理由に福祉サービスや教育が受けられない現状を変えていくため、家族同士で力を合わせようと家族会を立ち上げました。デイサービスを作ってほしいと役所等にお願いしても、「大変ですね。大事だよね」と言われるだけで話は進みません。こうなったら自分でやるしかないと重症心身障害児を受け入れるままはーとを始めたのです。 設立後は、当事者としての目線を持ちながら、子どもの医療と福祉に向き合う日々が続きました。

多くの家族を見てきて、当事者だからこそ気づくこと、言えることがあるといいます。たとえば、重症心身障害児や医療的ケア児は、社会の仕組みの中で経験が狭まれているだけでなく、親が子どもの新しい経験の機会を選択しない時もあるそう。

「大変だな、ちょっと厳しいな、と思ったり、心配を重ねているうちに毎日いろんなことを諦めてしまうのです。引きこもるとますます世間と分断されてしまいます。一部のお母さんは過保護すぎる面もありますし、自分からもっと地域とつながる努力をするのも親としての役目だと思っています」。

この音楽コンサートが、親御さんを後押しする、ほかの家族との出会いや外に出るきっかけの1つになればという想いがありました。

手作りのマラカスを振りながら、みんなで思いきり歌いました

当たり前にみんなが一緒にいる社会を

ままはーとの理念は、「重症心身障害児者の笑顔と地域をつなぐ」です。

「住民のみなさんが重い障害を持った子どもたちと会う機会がもっと増えるといいなと思っています。子どもたちに直接会うと、命の輝きを感じ、愛が溢れていて可愛いなと思ってもらえます。また、子どもの頃から同じ場所で一緒に時間を過ごしてほしい。それがとても大事で、障害のある子どももそうでない子どもも、一緒にいるのが当たり前の社会になっていったら。どうしても特別な配慮は必要な子どもたちですが、特別扱いしてほしいわけではないですし、一人の人として見てほしいです」。

「そして、子どもたち自身にも自分が地域の一員だと思ってほしいのです。お世話されるばかりではなくて、自分も誰かの役に立っていると思うとすごく前向きに人生が楽しくなるかなと思っています」と笠間さんは想いを語ってくれました。

「今回のコンサートはままはーとの活動の中で重要なターニングポイントでした。このように音楽を楽しむ時間を今後も作っていきたい。福島県は音楽に熱いお国柄なんですが、他県とコラボレーションをする企画もでているんですよ」。

誰もが一緒に楽しめる音楽を媒介にして地域のあらゆる人が出会い、つながり、温かい関わりが広がっていく。そんな風景を思い描いて、ままはーとは親子を応援し続けます。

演奏者さんと「ありがとう」のハイタッチ!

特定非営利活動法人ままはーと
●団体情報はこちら(CANPAN団体DB

    ●2023年度日本財団助成事業(医療的ケア児が参加可能なコンサートの開催)

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