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ファシリティドッグを全国のこども病院に届ける

2023.03.27
特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ

闘病中の子どもに寄り添うファシリティドッグ

こども病院に常勤をして子どもに寄り添う「ファシリティドッグ」を知っていますか? 闘病中の子どもに寄り添うための専門的な訓練を受けた犬のことで、病棟のスタッフの一員として、子どもと家族の心身のケアに携わります。

 一緒に手術室に行ったり採血に付き添うなど、ファシリティドッグがいることで子どもたちはストレスが軽減され、治療に前向きになり、食欲やリハビリが促進されるなどの効果が報告されています。

 東京にある国立成育医療研究センターには、2021年からファシリティドッグの「マサ」が勤務しています。訓練中のマサが、国立成育医療研究センターを初めて訪れた時のことでした。
「〇〇ちゃんが立った!」と看護ステーションで、医師や看護師みんなが立ち上がり、歓声があがりました。

 ベッドで横になっていた男の子が、廊下を歩くマサを一目見ようと立ち上がったのです。その男の子は治療の影響で歩かなくなり、スタッフがリハビリを促したくてもなかなか応じようとしなかったお子さんでした。

 「ファシリティドッグが持つ可能性、力を感じる印象的な出来事でした」とプログラムマネージャーの村田夏子さんは振り返ります。「人の手が届かないところで、犬が力になることがあるのだと感じました」。

 ファシリティドッグの導入を促進する活動を行っている特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ(以下、シャイン・オン!キッズ)は小児がんや重い病気と闘う子どもたちとその家族をサポートする様々な活動をしています。その1つであるファシリティドッグを届ける活動は2010年からスタート。静岡県立こども病院に国内で初めてファシリティドッグ「ベイリー」が導入され、2015年からは日本財団が日本歯科医師会の協力のもと行っているTOOTH FAIRYの支援の後押しを受け、今では4つのこども病院に4頭が常勤。さらに1頭が国内で訓練を受けています。

入院中のお子さんとお母さんと
みんなの注目を浴びてアニーも嬉しそうです

地域で支える仕組み作りを

マサは20214月に国立成育医療研究センターでの勤務を開始し、これまでに入院中の子ども2600人以上に寄り添ってきました。訪れる病棟が増えて、手術室への同行もできるようになるなど、順調に活躍の場を広げています。

 ファシリティドッグはこれまでハワイで育成された犬を譲り受けていましたが、2019年からは国内育成を試み始めました。2022年度の一年間で計6366人の子どもの元を訪れ、今後5年で訪問数を今の二倍にしようと動いています。

 ところが、2022年度のTOOTH FAIRYの支援で新たに迎えた候補犬ニックとの訓練開始早々、コロナ渦の影響で困ったことが。これまで導入予定の病院の協力を得て実地訓練をしていましたが、変異株の流行など、ピークが訪れる度に外部から訪問をすることが難しい状況になってしまいました。困り果てていたところ、「リラのいえ」という病児の子どもの家族を受け入れる施設が快く受け入れてくれたのです。また、病院でファシリティドッグと触れ合ったことのあるお宅に家庭訪問をして、子どものきょうだいと楽しい交流をしたこともありました。

 「大きな病院で活動をすることが目標ですが、リラのいえのようなご家族の滞在施設やこどもホスピスに訪問することは、犬にとっても貴重な経験です。先方にも大変喜ばれ、新たな繋がりができたことも有難かったです。こうした新しい事に挑戦しながら多くの病院にファシリティドッグを届けていけたらと考えています」と村田さんは言います。

 「今後は、ファシリティドッグと過ごした経験のあるお子さんやご家族と繋がりながら、一緒にファシリティドッグを育てるなど、地域で小児がん患者を支える仕組みを作りたい。より身近な課題として多くの方の関心を得られるよう自治体などと連携してローカルの力を育んでいけたらと考えています」。

リラのいえでの一幕 ニックが「バイバイ」をすると
男の子はウルトラマンの「スペシウム光線」でお返事!

コロナ渦の今だからこそ続けてほしい

コロナの緊張感が高まった時期に、ファシリティドッグを導入している神奈川県立こども医療センターに活動を控えるべきか、ハンドラー(犬をコントロールする人)の森田優子さんが相談に行ったところ、「こういう時だからこそ、子どもたちの心のケアが必要。訪問を続けてほしい」と言われました。

これまで続けてきた中で信頼が育まれ、子どもたちにとってファシリティドッグはいなくてはならない大切な心の支えになっていたのです。

プログラムマネージャーの村田さんは動物福祉の専門家。盲導犬の研究が博士論文のテーマでした。「動物が幸せになる仕事をしたいと考えていた中、動物が凄く輝いていて素敵だなと思ってこの世界に飛び込みました。子どもとご家族がふわりとした柔らかくて楽しげな表情をしているときが何よりも嬉しくてやりがいを感じています」。

犬たちは、動物福祉に基づいて活動をし、休日には公園や海や山で思いきり遊ぶなど、犬らしい時間を満喫しています。

一緒にいると自然な笑顔がこぼれます
マサの添い寝の寝息が笑いを誘うことも

子どもと家族に笑顔を届け続ける

「まずはより多くの人にファシリティドッグのことを知ってほしい。ファシリティドッグのことを話してほしいです。それが我々の力、励みになります」と村田さん。

 「ファシリティドッグは診療報酬制度の対象になっていないため、活動のための費用の多くは寄付でまかなわれています。少しでも多くの方に知っていただくための啓蒙活動にも力を入れて、まずは今の訪問者数をあと5年で2倍にするために頑張ります。全国38のこども病院にファシリティドッグを届けるという長年の夢を叶えて、ゆくゆくは子どもがいる全ての病院でファシリティドッグが当たり前のように活動できるように国に働きかけていきたいです」

 たくさんの子どもとその家族に笑顔と癒しを届けるために、これからもシャイン・オン!キッズの挑戦は続きます。

マサ(左)と一緒に 候補犬のニック(右)が日本財団に表敬訪問
感謝状を渡しました

●特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ
団体情報はこちら(CANPAN DBへ)

●日本財団支援事業
ファシリティドッグを病院に届ける活動(2021年度支援事業)(2022年度支援事業)

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