人と社会のつながりを感じる特別な旅
難病児や医療的ケア児とその家族に寄り添って
日々病気に向き合う子どもたちとその家族に特別な時間を過ごしてもらいたいと、公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」では、全国各地で迎え入れてくれる方たちがいる場所への家族旅行を実現する「ウィッシュ・バケーション」と、外出できない子どもの入院先や自宅を訪れてパーティをデリバリーする「ホームパーティプログラム」などを行っています。
ウィッシュ・バケーションで北海道から浅草観光に来たご家族。両親は病児を連れての旅行に少し緊張の面持ちでしたが、子どもの名前が書かれたウェルカムカードを持った人力車のスタッフたちのあたたかな歓迎に、笑顔になった目から涙が溢れます。
社会の人びとに気づきや学びを
ウィッシュ・バケーションでは、受け入れの協力をしてくれる企業の支援者と共に、数か月前から宿泊先の確保や移動などスケジュールを準備。万全の体制で家族を受け入れます。
参加家族は支援者とのあたたかな交流を通して社会と関わりを持つ勇気を得、自分たちとの触れ合いによって支援者も様々な気づきを得たり喜びを得たりしていることが大きな励みになっています。
一方、支援者にとっても参加家族との関わりは、家族とは何か、健康とは何か、命とは何かを考えるきっかけとなります。参加家族の喜ぶ姿を見ることで、自分の仕事に誇りと生き甲斐をもってもらうこともウィッシュ・バケーションの大きな目的なのです。
ディズニーランドへの同行体験に参加したある女性が、「家族って素晴らしい。自分もこんな家族を作ってみたい」と、付き合っていた男性に逆プロポーズをしてゴールインしたことも。子どもと家族は、かわいそうだから何かをしてあげるといった対象ではなく、その生き様で人生や家族と共に生きる意味などを教えてくれる存在なのかもしれません。
憧れの地、沖縄に新たな拠点
さらなる活動の拡大のため、日本財団の助成を受けてこの3月、沖縄に医療的ケア児の受け入れに対応したレスパイト施設が完成しました。
病室のベッドにいる子どもたちにとって青い海と青い空の沖縄は憧れの地。ここで親子はゆったりと特別な時間を過ごし、他の参加家族と交流することもできます。
その上で、実践的に学ぶ場としての研修を地元の企業、観光業界、医療関係者、看護学校生医大生らと共に行い、ウィッシュ・バケーション経験者家族にも研修に参加してもらって、実際に美ら海水族館に車椅子などで訪れる外出体験を行いました。
これらを終えての発表では、今後の地域連携や企業の社会貢献、学生やNPOの参加についての具体的な方策、緊急時の細やかな対応などについても語られ、「物理的なバリアフリーは大事だが、意識のバリアフリーも大事。そこを変えていかないと彼らに寄り添ったおもてなしをすることにならない」というホテルマンの言葉など、様々な気づきと発見がありました。
子どもたちの笑顔のために
活動では家族同士のつながりも大事にしており、年に数回、ウィッシュ・バケーション参加者の同窓会や、全国の家族が集まるイベントを開催するなど、旅を終えても関係は続きます。オンラインで親同士がやりとりをできるコミュニティサイトも6月に開始し、ゆるやかな交流も生まれています。
「当初は我々がこうしてあげたらいいだろう、どこに連れていこうかということを考えていましたが、どこに連れていくかということよりも、『誰と何をするのかということが何よりも大事』ということがわかってきました」と理事の柴田礼子さんは言います。
社会の様々な人たちとのつながりを作ってきた10年間でしたが、子どもが成長して、「看護師さんにたくさん助けてもらったから自分も看護師になった」「団体の活動に加わりたい」という子がでてくるなど、新しいステージを迎えています。
「沖縄への招待家族数を増やし、離島のお子さんを呼び、一般の人にも沖縄を訪れてボランティアとして関わる中で気づきを得てもらいたい。また、お母さんたちが行っている日常のケアをやりやすくするために看護師や地域を交えての研修、相談窓口、児童発達支援なども準備できたらと考えています。面白いこと、楽しいことをこれからも開拓していきたいです」と柴田さん。「子どもたちをいかに笑わせるか、家族全員に笑顔になってもらえるか。それが我々の喜びであり、言ってしまえばそれにつきるのですが、そのためにこれからも新しい企画に挑戦していきます」
入院先や自宅にパーティをデリバリーする「ホームパーティプログラム」にも引き続き力を入れていきます。明日もターミナルケアの病児の家庭に訪問するという柴田さん。「小さい頃からの写真で面白いアルバムを作って持っていきます。喜んでもらえるかな」と語ってくれました。
・公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を
団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)
・2019年度 支援事業(TOOTH FAIRY)
医療的ケアに対応した地域連携ハブ拠点のモデルづくり
1.連携会議の開催:那覇市恩納村、参加者100名(医療・福祉関係者、NPO、学生等)
2.ホスピタリティ研修の実施:那覇市恩納村、参加者120名 難病児を受け入れるにあたっての基礎知識等、難病児との外出体験
3.報告会4回開催