プロスポーツチームの一員になる
大好きなスポーツをあきらめない
「ハイ!」目をキラキラと輝かせた男の子が、大柄なバスケットボールの選手にボールをパスします。選手は笑顔でボールを受け取り、シュート! 試合前のコートで選手のウォーミングアップをサポートしている男の子は、7歳の人形櫂世(ひとかたかいせい)君。足には歩行を助ける補装具を付けています。
2017年の5月に足に急な痛みが出て受診したところ、何らかの理由で大腿骨に血流がいかなくなり骨がつぶれてしまう股関節の病気「ペルテス病」と判明し、すぐに入院。長期間にわたり、足に器具を付けての治療が始まりました。
入院中に櫂世君はNPO法人Being ALIVE Japanと出会い、プロスポーツチームが長期治療中の子どもをメンバーとして迎え、チームの一員として様々な活動を共に行なうTEAMMATESプログラムを知りました。
櫂世君は2017年11月からBリーグの男子プロバスケットボールクラブ「アルバルク東京」に入団。2週間に1回、練習や試合に訪れては、チームの活動を頑張っています。
入団式にチームメイトと背番号14のユニフォームを着て
応援してくれる人にたくさん出会い、たくさん成長する
試合当日、櫂世君はフロントスタッフとして活躍します。選手のウォームアップのお手伝い、ドリンクの準備。休憩時間にはグッズを客席に投げ、大好きなマスコット「ルーク」の紹介をするなど大忙し。試合後にヒーローインタビューをすることもあります。時にはコートのモップかけにも挑戦します。みんなに喜んでもらいたい一心で「次はもっとうまくやりたい」と熱心に話します。
練習では選手の飲んだカップを率先して回収し、ドリンクを入れるなど自主的に動いています。様々なことに挑戦し、その中で「自分ができること」を見つけて自ら動くようになるなど、常に成長を見せる櫂世君。
活動の中で声が小さいと自分で気付き、もっと大きな声を出したり、選手はよく食べていると聞いて、食が細いところを頑張って食べるようになったり。自分を応援してくれるたくさんの人に出会い、たくさんの成功体験や感動をチームメイトと共有し、たくさんの事を感じて、たくさん成長しました。そしてもっと成長したいと思うようになりました。活動を通して選手への憧れはますます募り、希望や目標をもてるようになりました。
スポーツドリンク作りは櫂世君にとって大きな成功体験。
休憩に走ってくる選手に渡して、なくなったら入れてと大活躍
ファンも選手も応援!
櫂世君が一緒に活動し、自分のできることを探している様子を見て、選手やスタッフもまたよい刺激を受け、モチベーションが上がったといいます。チームのファンの間にも、櫂世君は大人気。チーム、そしてファンが櫂世君を応援し、櫂世君もチームを応援する。お互いによい影響を与えあっています。
また、櫂世君による選手へのインタビューでは、それまでスタッフや選手同士が知らなかった選手の新しい一面を引き出すこともあり、チーム内のコミュニケーションにも一役買っているようです。
試合当日にはMCとして参加。ヘッドコーチと話します
少しでも多くの子どもたちにスポーツという青春を
Being ALIVE Japanでは、長期治療を必要とする子どもがチームメイトや友人と成功体験や達成感、感動を共有することで、社会参加の促進や復学を支援していくことを目的としています。世界初の試みである櫂世君の入団を皮切りに、2018年3月にはプロのアメリカンフットボールチーム、ノジマ相模原ライズとのマッチング事業も始まりました。
「少しでも多くの子どもたちにこうした機会を与えられたらと思っています。この事業は、心臓疾患など、運動制限のある子どもでも参加できます。長い療養生活をしてスポーツに関わる機会が少ないお子さんにこそ知ってもらい、参加してもらいたい。長期治療を必要とするお子さんとご家族にこの活動の事がきちんと届くように発信していく必要があります」と理事長の北野華子さんは語ります。
また、活動を広げていくためには、ボランティアや寄付といった、サポーターの存在が不可欠。今後、病児支援専門のボランティアの育成も行いたいといいます。
「われわれはこの活動のことを、『チームメイツ事業』と呼んでいます。子どもを応援してくれるアスリート、ボランティア、企業や個人など、関わる全てがチームメイトです。皆さんにも、スポーツを通じて青春を届けるチームメイトの一人になってもらえたらと思っています。」
櫂世君は「将来はバスケットボール選手になりたい」という夢を胸に、5月にアクバル東京を卒業します。チームメイトとの輝かしい時間、貴重な体験はこれからの人生にとってかけがえのない宝物になることでしょう。
ファンにマスコットキャラクターを
紹介するのも大切な仕事
・NPO法人 Being ALIVE Japan
団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)
・2017年度 日本財団助成事業
スポーツを通じた退院・復学支援モデルの構築(TEAMMATES in Sport Team)
2017年11月 よりプロバスケットボールチームとのマッチング事業を実施。
2018年3月よりプロのアメリカンフットボールチームとのマッチング事業を実施。