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小児病棟に本物の音楽を届ける

2018.05.29
特定非営利活動法人OnPal

音楽で元気になってもらいたい

音楽はときには言葉以上に心を癒し、人生に喜びや力を与えてくれます。難病や重い疾患と闘いながら入院生活を送る子どもたちに「音楽とともに楽しい時間を過ごし元気になってもらいたい」「楽器との出会いを通して豊かな感性を育んでもらいたい」と、特定非営利活動法人OnPalは、1学期に1回、福岡の九州大学病院の小児医療センターと福岡市立こども病院、福岡大学病院にプロの音楽家による「音楽授業」やコンサートを届けています。

 

九州大学病院に小児医療センターが新設された2006年に音楽やアート、デザインで子どもたちに元気を届ける「元気アートプロジェクト」が始まりました。その音楽部門を担っていたグループがこども病院やその他の病院にも活動を広げていこうと、2013年にプロジェクトから独立する形でOnPalを設立しました。

自分で弾くのって面白いね! 

子どもたちは初めて触れる楽器の演奏に夢中になります

工夫を重ねた「音楽授業」とコンサート

院内学級で繰り広げられる「音楽授業」では、音楽家が子どもたちに演奏を聴かせるだけではなく、子どもたちも楽器にさわって実際に演奏してみたり、楽しい楽器クイズに挑戦するなど、学習意欲がわくような工夫をしています。いかに子どもたちを引き込み夢中にさせるかは、音楽家の腕の見せどころ。話術を練ったり、豊かな表情で表現をしたりと、様々な技を駆使します。

 

チェロなどの弦楽器はその背に触れて音の振動を体感。また、吹く力の弱い子どもでも簡単に音が出せる楽器、スタッフ手作りのストロー製のオーボエやアクリル管でできたフルートで合奏に挑戦します。パーカッションの授業では、四拍子や三拍子のリズムで「とんかつとんかつ」「すいかすいか」と唱えながらみんなでマラカスなどをならして大盛り上がり。毎回趣向を凝らした出題がされる楽器クイズでは、「クラリネットは何個に分解できる?」という問題で、五つの部品でなりたっているクラリネットを一つ一つ分解していく「だんだん小さく」という楽しい曲で答えあわせをしていました。

 

クリスマスコンサートでは、発砲スチロールペーパーで作った雪の結晶が降ったり、曲にあわせてサンタが登場したり、会場に紙飛行機が飛び交ったりと、元気アートプロジェクトによる楽しい演出との協働で盛り上げました。また、オリジナル作品の紙芝居コンサート「カンタローのぼうけん」では、捨てられた空き缶が川をくだって廃品回収され再生するまでのお話を、楽しいイラストとナレーション、ショパンの曲で表現。子どもたちは演奏やお話を楽しみながら、物を大切にすることを学びます。

クリスマスコンサートでは、雪を降らせたり紙飛行機を飛ばしたり。

遊び心が満載です

豊かな心を育む一助に

活動を続けていくと、「厳しい治療の中で、音楽の楽しい経験をたくさんさせてもらったことに感謝の気持ちでいっぱいです。」というお子さんを亡くした親御さんからのメッセージや、「子どもたちの数えきれないほどの笑顔が忘れられません。子どもたちの笑顔と元気のためにこれからもずっと活動を続けてください」という院内学級の先生からのうれしい言葉が届いています。

「治療という病院の機能に音楽という感性を加えることで、『優しい気持ちを伝える病院』を実現し、入院中の子どもたちが豊かな心を育む一助になりたいのです」とOnPal理事長の真隅さんは話します。

音楽家にとっては、自分たちの音楽で子どもたちが元気になってくれるのはとてもうれしく、逆に子どもたちから力をもらい、音楽の力を再発見していると言います。

九州大学病院の「がんばるーむ」でマリンバの「音楽授業」。

マラカスなどパーカッションの楽器をいろいろ用意してリズムを楽しみます

活動の幅を広げ、ノウハウの提供も

「今後は福岡市内の院内学級を持つ別の病院や市外、さらに熊本県にも活動を広げていく予定です。また。ホームページに、授業のプログラムや手作り楽器の作り方、楽器クイズなど、これまで培ったノウハウを掲載していきます。これを見て、ほかの地域でもわれわれの活動を参考にしてくれる人がいればと思っています。」と真隅さんは語ります。

 

在宅ケアの子どもたちにプライベートコンサートを届けたり、特別支援学級の活動にも挑戦したいなど、将来の展望は尽きません。

 

これからもOnPalは、病気と闘う子どもたちに元気や笑顔を届け、心の成長をサポートしていきます。

福岡市立こども病院の「ひまわり学級」で、オーボエとファゴットとピアノの「音楽授業」。

初めてみる楽器に子どもたちは興味津々

・特定非営利活動法人OnPal

 団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)

・2017年度 日本財団支援事業

 芸術プログラムを病院に届ける活動(Tooth Fairy)

プロの音楽家による音楽授業を年7回(小児病棟に入院している子ども90名)、コンサートを年6回開催(小児病棟に入院している子ども240名とその家族)

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