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すべてのこども病院にファシリティドッグを

2018.08.08
特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ

闘病中の子どもの頑張る力に

「ベイリーがいるから治療を頑張れる」「ヨギに会えるのがいつも楽しみ!」。

小児病棟の子どもたちが笑顔で話しているのは、入院生活をともに過ごす友だち、ファシリティドッグのこと。

ファシリティドッグとは、入院や闘病でストレスを抱えた人びとにやすらぎを与えるよう特別にトレーニングされた犬のことで、毎日小児病棟に勤務し、子どもたちとスキンシップをとったり、ボールで一緒に遊んだり、治療や検査に同行するなどして、闘病中の子どもたちを応援しています。子どもたちは長い期間同じ犬と過ごすことで特別な関係を築き、一緒に遊びたいからと治療を頑張る意欲を持つなど、明日への力の源になっています。また、ファシリティドッグを撫でながらだと泣かずに注射を受けられたり、検査時のストレス値が軽減されたという効果も見られています。

特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ(以下、シャイン・オン!キッズ)は、子どもを小児がんで亡くした日本在住のアメリカ人夫妻が、自らの体験を同じ境遇にある日本の親子の役に立てたいと2006年に設立した団体です。闘病中の子どもの心の支えになる活動を探し求める中、ハワイの病院でファシリティドッグと出合い、子どもたちの驚くほどの笑顔と変化を目の当たりにしたことで日本への導入を決意、活動に取り組んできました。

2010年に日本初のファシリティドッグ、ベイリーがやってきて以来、現在日本国内では、静岡県立こども病院にヨギ、神奈川県立こども医療センターにベイリーとアニーの、計3頭が活動しています。

車いすに座る男の子と訓練をしているところ

この病院にもファシリティドッグを

より多くの子どもに笑顔の時間を過ごしてほしい、ファシリティドッグを心の支えにして治療を頑張ってほしいと、シャイン・オン!キッズは、「全国のすべてのこども病院にファシリティドッグを」という夢に向けて、活動を続けています。

 

導入の啓発でまず必要なのが病院側の理解と感染症に対する誤解の払拭です。病院や病棟に入る前には除菌ティッシュで犬の体を拭くなど、管理の手順が細かく決められており、感染対策上の問題がないことが静岡県立こども病院の研究により報告されています。

 

実際に導入するには、病院の受け入れ態勢、ハンドラー(犬をコントロールする専門職)の採用、ファシリティドッグの調達といった準備が必要です。さらにファシリティドッグの譲渡費用、ハンドラーのハワイでの訓練費用に加えて、人件費、犬の管理費など、毎年の運用資金が必要なため、病院が導入に興味を示しても、資金が厚い壁になることが少なくないといいます。

 

2018年の秋には、都内の公的病院でファシリティドッグの新規導入が予定されています。患者側からの要望を受けた病院が動き、実現に向かいました。多くの条件を乗り越えられたのは、病院が「子どもたちのために、この病院にファシリティドッグを」という強い意思を持ち、ファシリティドッグが持つ力を信じてくれたからでした。

トレーニング風景。指をさして移動の指示(コマンド)を出しています

ハワイでの特別な訓練

適性があると選別された子犬が1年半〜2年間、ハワイの訓練所や医療現場で動物介在療法の特別な訓練を受け、ファシリティドッグとなります。自然豊かな環境で愛情をいっぱいに受けて育つため、病院のような緊張の多い環境でも人に愛情を持って接することができるといいます。

ハンドラーは、4年以上の臨床経験のある看護師などの医療従事者で、病院でのコミュニケーション能力やファシリティドッグへの指導力といった適性を鑑みて候補者が選出されます。ハワイの訓練所で60種類以上のコマンド(指示)の実技のトレーニング、生態学、心理学、感染予防、危機管理などについて研修を受け、最終審査を経てハンドラーに認定されます。ハンドラーにとって、ファシリティドッグは活動のパートナーであり、家族の一員。日々の業務の終了後には一緒に帰宅し、共に生活を送ることになります。

ハンドラーは、資格を取得した後も、フォローアップ研修など、技能を高めるための講習を受けます。

ハワイで、ヨギのハンドラー鈴木恵子さんがフォローアップ研修を受けているところ(右から2人目)。

「すべての病院にファシリティドッグを」という夢に向かって

最初のファシリティドッグ、ベイリーがやってきたときは、日本の病院の中に犬を連れてきて、集中治療室に入ることや手術室まで付き添うことは“夢のまた夢”だったといいます。それが実現できたのは、子どもたちの心のケアをしたいというシャイン・オン!キッズの熱い思いと、受け入れる病院側の理解と協力、そして、ファシリティドッグとハンドラーが地道な実績を積みかさねてきたからこそ。

2018年の秋に新たに日本にやってくるファシリティドッグもまた、重い病いと闘う子どもたちにたくさんの笑顔と癒しを届けてくれることでしょう。

 

※2019年8月に東京都立小児総合医療センターに、日本で四頭目のファシリティドッグとなる「アイビー」が導入されました。

ファシリティドッグは、そっと寄り添い心を癒してくれる、

子どもと家族にとって大事な存在です。

・特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ

 団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)

・ 2017年度 日本財団支援事業

 新規施設へのファシリティドッグの導入準備および派遣(TOOTH FAIRY)

小児病棟に入院している子どもとその家族への訪問活動を行うため、ハンドラーの研修およびファシリティドッグの派遣を行う。

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