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地域の福祉を変えた連続セミナー

2018.08.24
社会福祉法人キャンバスの会

障害児を取り巻く環境を変えたい!

「これをきっかけに宮崎県の障害者福祉が変わる、連続セミナー『輝け、みんなのいのち』は、参加者全員の心に、そんな希望を生んだすばらしい研修会でした」。

そう語るのは、この連続セミナーを主催した社会福祉法人キャンバスの会代表の楠元洋子さん。キャンバスの会は、2004年の設立以来、重症心身障害児者の医療型短期入所施設をはじめとした障害者のための福祉事業所を宮崎県内で18カ所運営。楠元さん自身も今年42歳になる重度の障害がある次女を育ててきた母親です。セミナーは2017年7月~2018年2月に全5回、県内外の有識者が講師として登壇し、県の行政職員や議員、福祉関係者、学生、当事者の家族など、延べ500人以上が参加して大きな反響を生みました。

宮崎県生まれの楠元さんは、結婚を機に大阪府豊中市に移り住み、次女を出産。2001年、次女が25歳のときに、義母の介護のために再び宮崎に戻りました。戻った当時、県内の障害者福祉を、「大阪より30年遅れていると感じた」と振り返る楠元さん。「宮崎県では、周産期医療は進んでおり、たくさんの赤ちゃんの命が助かる一方、その後に続く障害児の福祉へは手が回っていませんでした。退院後は、そのまま施設に入所するか、母親と2人で家に閉じこもる生活。離婚などで家庭が崩壊する例も少なくなく、今もその状況に変化はほとんどありません」。

キャンバスの会が運営する重症心身障害児の医療型短期入所施設。

連続セミナーをきっかけに、宮崎大学医学部の医学部との連携が始まりました

障害者福祉事業に人材を!

重い障害がある子どものケアは、就寝後も続く痰の吸引、呼吸器の調整、排泄物の処理、特別支援学校も付き添いが必要なことがあるなど、家族、特に母親の負担は想像を越えます。もう少し介護を社会が担えれば、母親は他のきょうだいや家族との時間が作れたり、外で働くこともできます。それは母親と社会の接点となり家庭崩壊を防ぐとともに、障害のある子どもにとっても、家族以外の人と触れ合う貴重な機会となるのです。そんな信念の元に、楠元さんは2004年にキャンバスの会を設立し、県内の障害者福祉の発展のために活動を続けてきました。

そんな中、県の障害者福祉をさらに向上させるためには、障害者の置かれた環境に関する地域の深い理解と連携の強化が必要と考え、幅広い対象に向けた参加費無料の5回連続セミナー「輝け、みんないのち」が企画されたのです(当初の計画は6回。うち1回は台風のため振替に)。

講師には、楠元さんが活動の中で出会った障害者福祉の専門家が多数駆けつけました。国内随一の歴史を誇る岡山県の障害者福祉施設旭川荘の末光茂理事長をはじめ、宮崎大学の教育学部、看護学部、医学部などの教授、県内外の医療・福祉関係者、さらに、障害児施策に造詣が深い国会議員として、小児科医で参議院議員の自見はなこ氏、最後のセミナーには総務大臣の野田聖子氏も登壇。これらの講師陣の熱意あふれる講演によって、これまで障害者福祉にあまり縁がなかった人も数多く参加し、県の障害者の現状について認識を新たにしました。宮崎大学からは学生が多数聴講し、講演会後は施設でボランティア活動を始めたり、施設附属の診療所で医学部が全面的に協力を開始するなど、想像を越えるつながりが生まれたといいます。

移動動物園がキャンバスの会の重症心身障害児の入所施設を訪問。

以前から訪問活動は行われていましたが、研修で理解が深まったことでより有意義なものに変わりました。

地域の意識を呼び覚ました研修会

「研修会に参加者した関係者の意識が高まったことで、議会で取り上げられたり、県の福祉課が、障害者手帳を取得する前からの切れ目のない支援のために、障害や病気をもつ0〜2歳の子どもの把握に動き出すなど、さまざまなことが目に見えて進み始めました。旭川荘の末光先生からは、『先にいる私たちが後から来た人に追い越されて行くだろう』と、これからの宮崎の福祉についてうれしい言葉をいただきました」。

セミナーを通して、これから取り組むべき新しい課題も見つかったと楠元さん。

「家族からのどんな相談も受けられる『ワンストップ相談窓口』、親の就労の安定のために、子どもの体調が多少悪くても預けられる『医療的ケア児の就学前支援のできる児童発達支援事業所』『在宅における災害時個別支援マニュアルの作成』、それから親が年老いて介護ができなくなったあとも安心して地域で暮らせる『医療型グループホームの設立』の4つです。特にグループホームは、現状では在宅介護ができなくなると遠隔地の入所施設しか選択肢がなく、子どもに会うことが難しくなります。離れて暮らすことになっても子どもに会える環境を整えたいのです。これは障害児の親としての最後の願いですが、これもセミナーのおかげで実現の可能性が見えてきました」。

次女を育てるなかで、40年も経てば障害者福祉を巡る状況は変わっているはずと信じて過ごしてきたという楠元さん。現状は想像した未来にはまだまだ遠く、障害がある人すべてが一生を安心して暮らせる状況ではないといいますが、このセミナーを通して生まれた地域の決意が重い扉を開き、描く未来への道筋が見えてきたようです。

歯科医による訪問診療も新たに始まった連携のひとつ。

経管栄養であっても、口の健康を保ち、口から食べる体験は大切。

保護者も一緒に健診を受けられます。

・社会福祉法人キャンバスの会

 団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)

・ 2017年度 日本財団助成事業

 医療的ケアに関する多職種セミナーの実施。

難病の子どもと家族が必要とする地域生活に関する情報をワンストップで提供するとともに、行政などに対する提言や地域資源の発掘・育成を行なうための多職種の支援者連携の中核となる人材の育成を目的に全5回の連続セミナーを開催。延べ537名参加。

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